老齢年金の繰上げと障害年金

以下は純粋に法律の条文を解釈したつもりの内容を説明しています。政府や自治体の運用上の説明で確認したかったのですが、完全には確認できていません。結論だけではなく条文も良くご覧になり解釈に誤りが無いかご自身で検証お願いします。
なお、本稿では「老齢年金」は老齢基礎年金、老齢厚生年金の両方を含む語、「障害年金」は障害基礎年金と障害厚生年金の両方を含む語として使用します。

1.関係する法律上の条文

以下で【】で囲まれた部分は私が挿入した注です。

国民年金法附則
(障害基礎年金等の特例)
第九条の二の三  第三十条第一項(第二号に限る。)【基本の障害年金で被保険者であった60歳
から65歳】、第三十条の二【事後重症】、第三十条の三【基準傷病】、第三十条の四第二項
【20歳前傷病】、第三十四条第四項【その他障害との併合による改定】、第三十六条第二項ただ
し書【その他障害との併合による支給停止解除】及び第四十九条【寡婦年金】並びに附則第五条
【任意加入被保険者】の規定は、当分の間、附則第九条の二第三項若しくは前条第三項の規定によ
る老齢基礎年金の受給権者、厚生年金保険法附則第七条の三第三項若しくは第十三条の四第三項の
規定による老齢厚生年金の受給権者又は他の被用者年金各法による退職共済年金(厚生年金保険法
附則第七条の三第三項又は第十三条の四第三項の規定による老齢厚生年金に相当するものとして政
令で定めるものに限る。)の受給権者については、適用しない。 

厚生年金保険法附則
(障害厚生年金の特例)
第十六条の三  第四十七条の二【事後重症】、第四十七条の三【基準傷病による障害年金】、
第五十二条第四項【その他障害による額の改定】、第五十二条の二第二項【障害基礎年金のその他障
害との併合による額の改定、およびその他障害との併合による支給停止解除による額の改定】及び第
五十四条第二項ただし書【その他障害による支給停止解除】の規定は、当分の間、附則第七条の三
第三項若しくは第十三条の四第三項の規定による老齢厚生年金の受給権者又は国民年金法附則第九条
の二第三項若しくは第九条の二の二第三項の規定による老齢基礎年金の受給権者については、適用し
ない。 
2  第五十二条第七項の規定【65歳以上の3級の受給権者の障害増進による額の改定の禁止】の
適用については、当分の間、同項中「六十五歳以上の者」とあるのは、「六十五歳以上の者又は国
民年金法による老齢基礎年金の受給権者」とする。

以上から分かるように障害の程度が変化した場合の額の改定(国年法34条1、2,3項、厚年法
52条1項、2項、3項)、併合認定(国年法31条、厚年法48条)は除外されていない。

2.老齢年金を繰上げた場合認められないこと

 障害基礎年金
  ・初診日において被保険者でないものについては障害基礎年金の支給は行わない
     (「被保険者であった者」は支給要件としない)
  ・事後重症による障害基礎年金は支給しない
  ・基準障害による障害基礎年金の支給は行わない
  ・その他障害の併合による年金額の改定は行わない
  ・その他障害の併合による支給停止の解除は行わない

 障害厚生年金
  ・事後重症による障害厚生年金は支給しない
  ・基準障害による障害厚生年金の支給は行わない
  ・その他障害の併合による年金額の改定は行わない
  ・その他障害の併合による支給停止の解除は行わない
  ・老齢基礎年金がその他障害による額の改定を行った時の額の改定
  ・老齢基礎年金の支給停止がその他障害との併合により支給停止が解除になった時の
   額の改定
  ・3級の受給権者の障害の程度の増進による額の改定

3.老齢年金を繰上げても可能なこと

 障害基礎年金
    (1)繰上げ後も第2号被保険者であり、その期間中に初診日がある障害による認定日
    請求
  (2)60歳前(被保険者期間中)に初診日がある傷病による障害による認定日請求
    (障害認定日が繰上げ請求後であっても構わない)
  (3)老齢年金の繰上げ請求前に障害認定日のある障害による認定日請求
    (初診日が被保険者ではない60歳以降であっても構わない)
    (4)60歳以降に任意加入した期間に初診日がある障害による認定日請求
    (障害認定日が繰上げ請求後であっても構わない)
  (5)繰上げ請求前に基準傷病の障害認定日があり、繰上げ請求前に2級以上に該当し
    た基準傷病による請求(初診日は被保険者でない60歳以降でも構わない)
  (6)繰り上げ前に受給権を有していた人の、新たな(1)(2)(3)(4)に相当する障害との
       併合による額改定(※併合認定は適用除外になっていない)
  (7)障害の程度が増進したことによる額の改定
  (8)その他障害との併合による障害認定日以降の障害の程度の増進が老齢年金の繰上
    げ請求前である場合の額の改定請求(請求は繰上げ請求後でも構わない)
  (9)その他障害との併合による障害認定日以降の障害の程度の増進が老齢年金の繰上
    げ請求前である場合の支給停止解除請求(請求は繰上げ請求後でも構わない)


 障害厚生年金
    (1)被保険者期間中に初診日がある障害による支給。
    (2)繰り上げ前に1級、2級を受給していた人の、新たな(1)に該当する2級以
    上の障害,障害基礎年金(1)(2)(3)(4)に該当する障害との併合による額改定
    (3)2級以上の受給権者の障害の増進による額の改定
  (4)その他障害との併合による障害認定日以降の障害の程度の増進が老齢年金の繰上
    げ請求前である場合の額の改定請求(請求は繰上げ請求後でも構わない)
    (5)その他障害との併合による障害認定日以降の障害の程度の増進が老齢年金の繰上
    げ請求前である場合の支給停止解除請求(請求は繰上げ請求後でも構わない)
初稿2015/7/8
改訂2019/1/24