厚生年金保険制度ができて以来の在職老齢年金の変遷についてまとめました。
■法令の参照
文中 昭和60年改正法:国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年5月1日法律第34号) 平成6年改正法 :国民年金法等の一部を改正する法律(平成6年11月9日法律第95号) 平成12年改正法:国民年金法等の一部を改正する法律(平成12年3月31日法律第13号) 平成16年改正法:国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年6月11日法律104号) 年金一元化法 :被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正す る法律(平成24年8月22日法律第63号)
当初は在職老齢年金の制度はなく、老齢年金(養老年金)は55歳以上(昭和29年から60歳以上) で被保険者でない場合にしか支給されていなかった。支給開始後も被保険者になった場合は支給停止 となった。 その後、昭和40年に在職中であっても65歳以上については支給(20%支給停止)すること になる。 昭和44年に60歳以上65歳未満についても標準報酬等級が基準以下の者に等級により20 〜80%支給停止のうえ支給することになった。 その後、標準報酬等級も改定され支給基準も改定される。これらの経過については以下の文献が 詳しい。 「旧法公的年金の解説」健康と年金出版社、2011年。 昭和60年においては次のような制度であった。 ・65歳以上は支給。標準報酬等級が21級(16万円)以上の場合は20%支給停止。 ・60歳以上65歳未満については標準報酬等級が21級以上は支給しない。 12級(9万2千円)以下は20%支給停止、13〜17級は50%支給停止、18〜20級は 80%支給停止。
・昭和61年 4月1日 被保険者の年齢上限を65歳に設けたことにより在職中の65歳以上は全額給付となる。 在職中の60歳以上65歳未満は政令で定める等級以下に支給。20〜80%停止 (昭和60年改正法) ・平成7年4月1日 在職中の60歳以上65歳未満で標準報酬月額と基本月額の合計が22万円以下である ときは20%支給停止。 22万円以上であるときは20%に規定の計算方法による金額を上乗せして停止 (平成6年改正法) ・平成14年4月1日 被保険者の年齢上限の70歳への引き上げに伴い、65歳以上の在職支給停止を導入。 在職中の65歳以上は標準報酬月額と基本月額の合計が37万円を超えるときは超えた 額の半分を支給停止。平成14年4月1日前に権利を取得している場合は適用しない。 (平成12年改正法) ・平成16年4月1日 在職中の65歳以上は総報酬月額相当額と基本月額の合計が48万円を超えるときは超 えた額の2分の1を支給停止 在職中の65歳未満は総報酬月額相当額と老齢厚生年金の80%を12で割った額の合 計額が28万円以下であれば20%支給停止。28万円以上であるときは20%に規定 の計算による額を上乗せして停止 (平成12年改正法) ・平成17年4月1日 在職中の60歳以上65歳未満は総報酬月額相当額と基本月額の合計が28万円を超えた 場合に超えた額の2分の1を支給停止(現在と同じ制度) (平成16年改正法) ・平成19年4月1日 65歳以上の在職老齢年金の仕組みを70歳以上の使用される者にも適用する。ただし 昭和12年4月1日以前生まれには適用しない。 繰下げ制度(平成14年4月1日に廃止)復活に伴い基本月額の計算から除く額に加給 年金額に加え繰下げ加算額を含める。 (平成16年改正法) ・平成27年 10月1日 70歳以上の使用される者の支給停止における昭和12年4月1日以前生まれの適用除外を 廃止。 (平成24年 年金一元化法) ・令和4年4月1日(案) 在職中の60歳以上65歳未満は総報酬月額相当額と基本月額の合計が48万円を超えた場合 に超えた額の2分の1を支給停止(案) (令和2年 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案)
初稿 | 2020/5/16 |