育児休業が認められる期間、育児休業取得時の社会保険料の免除期間、標準報酬月額の養育期間特例の期間、育児休業給付金が支給される期間について、法令上の根拠と共にまとめました。
■法令の参照
文中 育介法:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 育介則:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則 厚年法:厚生年金保険法 厚年則:厚生年金保険法施行規則 雇保法:雇用保険法 雇保則:雇用保険法施行規則
・出生日から可能(育介法第5条) ただし、労基法上の産前産後休業期間は育児休業は取得できない(育介法9条2項3号)ので、 自分が出産した子についての育児介護休業は産後8週間はとることはできないことになる。 ・事業主に届けた育児休業開始予定日から開始になる(育介法9条1項)。 この場合 ・出産が予定日より早まった場合等突発的事情が生じた場合一回に限り繰上げが可能 (育介法7条1項、育介則第10条) ・繰下げは法令上決められていないので、出産が遅れた場合は出生日以前に育児休 業を取得する可能性が出てくると思われる。 ・申出から予定日まで一か月(1歳6か月まで、および2歳までの育児休業は2週 間)ないときは、事業主は最大1か月(2週間)を経過する日まで開始を繰下げ できる。ただし突発的事由が生じた場合については最大1週間である。 (育介法6条3項、育介則10条、11条) ・1歳(1歳6か月)到達後の育児休業の開始日は次のどちらかでなければならない (育介法第5条第6項) ・1歳(1歳6か月)到達日の翌日 ・配偶者が育児休業をする場合は配偶者の育児休業終了予定日の翌日以前の日
・育児休業終了予定日として届けた日まで(育介法9条1項) ・一回のみ繰下げを申し出ることができる。この場合突発的事由は不要。(育介法7条3項) ・終了予定日前であっても次の場合は終了する(育介法9条2項、育介則21条) ・子の年齢到達 ・産前産後休業、介護休業、他の子の出生時育児休業、育児休業の開始 ・子の死亡、養子の離縁、子の別居、負傷・疾病等により終了予定日まで育児ができ なくなる 等の場合 ・育児休業の取得が法定で保障されている期間、回数は次の通りである(育介法5条) (a)1歳に満たない子、2回(1項) (b)条件を満たすときは1歳から1歳6か月に達するまで1回(3項) (c)条件を満たすときは1歳6か月から2歳に達するまで1回(4項) (a)の場合のみ「1歳に満たない」とされているが、(b)が認められる条件の一つとして当該労働 者またはその配偶者が「一歳到達日において育児休業をしている」があり、矛盾しているように 見える。また第2項では「一歳到達日までの期間内に二回の育児休業をした場合は」育児休業の 申出ができないとしていて、一歳到達日までの期間内”という表現が一歳到達日を含むのか含ま ないのかよく分からない表現である。 一歳に到達するのは出生日に応当する日の前日の24時である。従って一歳到達日においても 24時までは1歳に満たない状態であると考えることもできるから、1歳到達日において一歳に 満たない状態であることに矛盾はないと考えることもできる。また一歳到達日一日だけの育児休 業というのも原理的にはあり得るだろうが、その場合その後の育児休業はできないので、”一歳 到達日までの期間内”が一歳到達日を含むか含まないかはどうでもよいことである。 しかし、無意味に分かり難い表現は止めて欲しいと思う。
・出生日から、出生日から起算して8週間を経過する翌日までの間に4週間以内 ・出産予定日前に出産した場合は、出生日から、出産予定日から起算して8週間を経過する日 の翌日まで ・出産予定日後に出産した場合は、出産予定日から、出生日から起算して8週間を経過する日 の翌日まで(以上育介法9条の2第1項) ・合計28日に達するまで2回に分割することが可能(育介法9条の2第2項)
事業主に届けた出生時育児休業開始予定日から開始になる(育介法9条の2第1項) この場合 ・出産が予定日より早まった場合等突発的事情が生じた場合一回に限り繰上げが可能 (育介法9条の4で読み替えられた育介法7条1項、育介則第10条) ・繰下げは法令上決められていないので、出産が遅れた場合は出生日以前に育児休 業を取得する可能性が出てくると思われる。 ・申出から予定日まで2週間ないときは、事業主は最大2週間を経過する日まで開始を繰下 げできる。ただし突発的事由が生じた場合については最大1週間である。 (育介法9条の33項、育介則21条の5条で準用される11条)
・育児休業終了予定日として届けた日まで(育介法9条の5第1項) ・一回のみ繰下げを申し出ることができる。この場合突発的事由は不要。 (育介法育介法9条の4で準用された7条3項) ・終了予定日前であっても次の場合は終了する (育介法9条の5第6項、育介則21条の14、21条の20) ・子の死亡、養子の離縁、子の別居、負傷・疾病等により終了予定日まで育児ができ なくなる 等の場合 ・出生日(予定日前出産の場合は出産予定日)の翌日から8週間経過 ・出生日(予定日前出産の場合は出産予定日)以後の出産時育児休業の日数が28日に達する ・産前産後休業、介護休業、他の子の出生時育児休業、育児休業の開始
育児休業等をしている被保険者について、事業主が申し出たときは、 次の場合に応じて、社会保険料が免除される(厚年法81条の2等)。 ただし育児休業期間が1か月以下の場合は賞与の社会保険料は免除しない。 (1)開始月と終了月が異なる場合:育児休業等を開始した時から終了する日の翌日が属する月の 前月まで(第1号)。 (2)開始月と終了月が同じ場合:育児休業日数が14日以上の場合に限り当月(第2号) (出生時育児休業で就業させる日数がある場合はそれを除く)(厚年則25条の2第5項等) ここで”育児休業等”とは以下を言う(厚年法23条の2) ・育介法2条で定められる育児休業(出生時育児休業も含む。育介法2条、第2章) ・労使協定により、”業務の性質又は業務の実施体制に照らして、育児のための所定労働時間の 短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者”として所定時間労働の短縮 措置が講じられない労働者であって3歳未満の子を養育する者の申出により与えられる育児休 業に関する制度に準じる措置(育介法23条2項) ・一歳から三歳に達するまでの子を養育する労働者に与えられる育児休業 (育介法24条1項2号)
3歳に満たない子を養育する被保険者が申出をしたときは、養育することとなった日(その他 養育特例の開始日)から、標準報酬月額が養育することとなった日の属する月の前月(基準月) の標準報酬月額(従前標準報酬月額)を下回るときは従前標準報酬月額を標準報酬月額とみな す。(厚年法26条1項)
養育をすることとなった日、ただし次の場合はその日(厚年法26条1項、厚年則10条の3) ・新たに被保険者の資格を取得した日(1号) →この場合、基準月は、養育することとなった日の属する月の前月前一年以内における被 保険者であつた月のうち直近の月となる(厚年法26条第1項カッコ書き) ・保険料免除を受けている育児休業の終了日の翌日が属する月の初日 (その月に保険料免除を受ける産前産後休業を開始している場合を除く)(2号) ・保険料免除を受けている産前産後休業の終了日の翌日が属する月の初日 (その月に保険料免除を受ける育児休業を開始している場合を除く)(3号) ・その子以外の養育期間特例を受けている子の、特例適用を受ける最後の月の翌月の初日(4号) →法26条3号との関連でそれぞれどういう場合を想定しているのか不明
次に該当する日の翌日が属する月の前月まで(厚年法26条1項) ・3歳に達したとき(1号) ・被保険者の資格を喪失したとき(2号) ・養育特例を受ける他の子を養育することとなった時(3号) ・子の死亡等で養育しなくなったとき(4号) ・保険料免除を受ける育児休業を開始したとき(5号) ・保険料免除を受ける産前産後休業を開始したとき(6号)
養育することとなった日の属する月の前月において被保険者でない場合は、その月前一年以内にお ける被保険者であった直近の月とする(厚年法26条1項) その月前一年以内に被保険者期間が無い場合は特例を受けることができないということ。
基準月において他の子の養育期間特例が適用されている場合は適用されている他の子の基準月の標 準報酬月額(みなし標準報酬月額)を従前報酬月額とする(厚年法26条1項)。 ただし産前産後休業が始まったことにより他の子の養育期間特例が終了した場合(同条同項第6号) については、第6号の規定の適用がなかつたとしたならば、他の子に係る基準月の標準報酬月額が 標準報酬月額とみなされる場合にあつては、当該みなされることとなる基準月の標準報酬月額とす る(厚年法26条3項)。 (1)他の子の養育特例期間中に育児休業を開始する場合(夫の場合等)は、厚年法26条1項 5号によりその前月に養育特例は終了する。養育の開始月(出生月)の前月は他の子の養育特例期間 であるので、育休終了時に養育特例が開始し、この規定により他の子のみなし標準報酬月額が従前報 酬月額とされる。 (2)産前産後休業を取得したことで他の子の養育特例期間が終了(厚年法26条1項6号)した場 合、出生日の前月以前に産休を開始する場合、基準月(出生月の前月)においては他の子の養育期間 特例が適用されない。このため産休後、あるいは育休後に養育特例が開始される場合の従前報酬月額 は変わってしまうことになる。この場合、他の子に対する養育期間特例が産前産後休業により終了し なかったとした場合は、(1)と同様に他の子のみなし標準報酬月額が従前標準報酬月額とされるこ とになるので、厚年法26条3項の規定により、他の子のみなし標準報酬月額が従前標準報酬月額と して使用される。
次の休業をした場合に支給される(雇保法61条の7第1項) (a)1歳に満たない子を養育するための休業 (b)条件を満たす場合は1歳6か月に満たない子を養育するための休業 (c)条件を満たす場合は2歳に満たない子を養育するための休業 について休業を開始した日から、休業を終了した日まで(同条5,6項)支給される。 しかし実際の運用においては (a)の場合、1歳に達する日の前日まで (b)の場合、1歳6か月に達する日の前日まで (c)の場合、2歳に達する日の前日まで (行政手引59503-2) となっており育介法の扱い(従って社会保険料の免除期間における扱い)と違う。理由は不明。 同じ子に対し2回の育児休業をした場合は3回目以降の育児休業給付金は支給されない(同条 第3項)。しかし次の場合は例外となる。 ・1歳未満に2回の育児休業をした場合で、1歳に達する日後に初めて育児休業をする場合。 (雇保則101条の29の2第2号) ・1歳6か月に達する日までに2回の育児休業(第2号の育児休業を除く)をした場合であって 1歳6か月に達する日後に初めて行う休業をする場合(同条第3号) ・産前産後休業、他の子の育児休業、介護休業が始まった為に育児休業が終了になった場合で、 子や介護対象者の死亡等により産前産後休業等が中断したばあい(同条第1号)
・出生の日から、出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日までの期間内に四週間以内の 期間を定めて当該子を養育するための休業をした場合、休業日数分支給する。 (雇保法68条の8第1項、第4項) ・同一の子に対し3回以上の出生時育児休業を行った場合の3回目以降、および合算日数が28日 に達した日後に対しては支給しない(同条第2項)。
次の条件を満たさないものは育児介護休業法上の育児休業にはならない(育介法5条1項) ・その養育する子が一歳六か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合に あっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない 従って、社会保険料免除は受けることができない(厚年法23条の2、81条の2)。 また雇用保険法にも同じの規定があり(雇保法61条の7第1項、雇保則101条の22第1項4号)、 育児休業給付金を受けることはできない。 以上は社内規定等で育児休業取得が認められても変わらない。 養育期間についての標準報酬月額の特例については、育児休業ができないときも出産日を養育期間 特例の開始日として受けることができると思われる(厚年法26条) なお労使協定がある場合の拒絶対象である、就労1年未満等の労働者においては育児休業が拒絶されず 取得できた場合 ・育介法上の育児休業なので社会保険料免除の対象となる。 ・雇用保険上も除外対象ではないので育児休業給付金の対象となる。
次の場合に限り取得できる(育介法9条の2第1項) ・出生の日(出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては、当該出産予定日)から起算して八週間 を経過する日の翌日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない ・また雇用保険法にも同じの規定があり(雇保法61条の8第1項、雇保則101条の31第1項4号)、 育児休業給付金を受けることはできない。
・配偶者が子の1歳到達日以前において育児休業をしている場合、1歳2か月満たない子について 育児休業をすることができる。(育介法9条の6第1項) ※1歳到達日以前のいずれかの日に育児休業をしていればよく、1歳到達日において育児休業をし ているということが条件ではない。この育児休業に出生時育児休業が含まれるかはよく分からな い。第5条において出生時育児休業を育児休業から除くとしている条文に9条の6は含まれない ので出生時育児休業も含むとみるべきか ・育児休業開始予定日から起算して、1年から産前産後休業、育児休業、出生時育児休業をした期間を 引いた期間を限度とする(同条同項)。 例えば夫の場合は1回目の育児休業は1年から出生時育児休業期間を差し引いた期間 2回目の育児休業は1年から出生時育児休業期間、1回目の育児休業期間を差し引いた期間 が限度ということになる。 ・育児休業開始日が、1歳到達日の翌日後である場合、配偶者の育児休業の初日日前である場合は できない。(同条第2項) 育児介護休業法上の育児休業であるので社会保険料免除の対象となる。
・配偶者が子が1歳に達する日以前に子を養育するための休業をしている場合、1歳2か月に満たな い子を養育するための休業をした場合に支給される。(雇保法61条の7第8項) ※育児休業という用語を使わず子を養育するための休業としているので出生時育児休業も含むとみ るべきであろう。 育児休業に対する規定同様に ・育児休業開始予定日から起算して、1年から産前産後休業、雇保法61条の7の休業をした期間を 引いた期間を限度とする (雇保則101条の27)。 ・育児休業開始日が、1歳到達日の翌日後である場合や配偶者の育児休業開始日前である場合は 支給されない。(同条) 雇保則101条の27では出生時育児休業期間が除かれていない。これについては理由、取扱いとも不 明。 あるいは育介法では第5条において第9条まで育児休業には出生時育児休業は含まないことが規定され ているのに対し、雇保法、雇保則ではそのような記述が無いので、あるいは出生時育児休業も61条の 7の休業に含むという事なのかも分からない。しかしそれでは61の7第2項で3回目以降の育児休業 給付金は支給しないとしていることと整合が取れない。これは引き続き検討する。 行政手引でも出生時育児休業取得時の扱いが例示されていない。 なお育介法上の育児休業終了日と雇用保険上の育児休業終了日の一日の違いで若干ややこしいことが 起こる。 母が出産して子供が1歳に達するまで休業したとするとこれは育介法上は通常の育児休業である。この 時には1歳に達する前日までで通常の育児休業給付金は終了する。しかし、もし父が産休中に始まる育 児休業を取得した場合、母の育児休業開始日は1歳に達する日の翌日以前であり、また父の育休初日以後 であるから、1歳2か月までの給付金支給対象になり、1年間の制限である1歳到達日まで育児休業給 付金が支給される。しかし育介法上は9条の6が適用されたわけではない。
初稿 | 2019/3/21 |
改訂 | 2022/12/21 |
●法改正に対応 |