離婚時みなし被保険者期間、被扶養配偶者みなし被保険者期間の取り扱いについて

離婚時の厚生年金の分割で発生する離婚時みなし被保険者期間(厚生年金保険法78条の7)、被扶養配偶者みなし被保険者期間(同法78条の15)については、被保険者期間と扱うにあたって制約があります。この制約については良く知られており、いろんな解説記事を目にします。しかし、根拠法令が分散されていて探すのが大変です。正確な条文を確認したいとか、あまり知られていない読替えを必要とする場合に困ることになります。

本稿では離婚時みなし被保険者期間、被扶養配偶者みなし被保険者期間の取り扱いについて読替えを定めた法令の条文をまとめてみました。これ以外にあるかもわかりませんので見つけたら追加していきたいと思います。

■略語一覧

法:厚生年金保険法
令:厚生年金保険法施行令
平16改正法:国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号)
平16措置令:平成十六年度、平成十七年度、平成十九年度及び平成二十年度の国民年金制度及び厚生
       年金保険制度並びに国家公務員共済組合制度の改正に伴う厚生労働省関係法令に関する
       経過措置に関する政令(平成16年9月29日政令第298号)

1.離婚時みなし被保険者期間

離婚時みなし被保険者期間の取り扱いについては以下に定められている。

主なものは次の通り。

・加給年金を付与する条件である240か月には含めない(法78条の11)
・在職老齢年金計算時の標準賞与額は改定前の値を使用(法78条の11)
・遺族厚生年金の受給権者が厚生年金に加入したことが無くても「老齢厚生年金の受給権者」には該当。
  (法78条の11)
・300月で計算されている障害厚生年金についてはみなし被保険者期間は参入しない(法78の10)
・特別支給の老齢年金の支給要件の1年間には含まない(法附則17条の10)
・定額部分の計算には含めない(法附則17条の10)
・長期加入特例の44年には含めない(法附則17条の10)
・脱退一時金の支給要件である6か月には含めない(法附則17条の10)
・中高齢寡婦加算の要件240か月には含まない(令3条の12の3)
・振替加算の支給要件である240カ月以上の計算には含まない(平16改正法附則48条)
・昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間は保険料納付済み期間とはしない
 (平16年改正法附則48条)
・経過的加算額の計算には含まれない(平16措置令30条)
・被用者年金加入期間の短縮特例(昭和60年改正法附則12条)の被保険者期間には含まない
  (平16年改正法附則48条)
・一部繰上げ時の厚生年金被保険者期間には含まない(平16措置令30条)

2.被扶養配偶者みなし被保険者期間

離婚時みなし被保険者期間の取り扱いについては以下に定められている。

主なものは次の通り。

・加給年金を付与する条件である240か月には含めない(法78条の19)
・在職老齢年金計算時の標準賞与額は改定前の値を使用(法78条の19)
・遺族厚生年金の受給権者が厚生年金に加入したことが無くても「老齢厚生年金の受給権者」には該当。
  (法78条の19)
・300月で計算されている障害厚生年金についてはみなし被保険者期間は参入しない
             (法78条の18)
・特別支給の老齢年金の支給要件の1年間には含まない(法附則17条の12)
・定額部分の計算には含めない(法附則17条の12)
・長期加入特例の44年には含めない(法附則17条の12)
・脱退一時金の支給要件である6か月には含めない(法附則17条の12)
・中高齢寡婦加算の要件240か月には含まない(令3条の12の9)
・振替加算の支給要件である240カ月以上の計算には含まない(平16改正法附則50条)
・経過的加算額の計算には含まれない(平16措置令39条)
・被用者年金加入期間の短縮特例(昭和60年改正法附則12条)の適用はない
 (平16措置令39条)
・一部繰上げ時の厚生年金被保険者期間には含まない(平16措置政令39条)

【注】

良く知られているように、離婚時みなし被保険者期間、被扶養配偶者みなし被保険者期間については、振替加算を受けられない条件である240か月(昭和61年経過措置令25条)には含まれる。これは明示的な規定はないが、昭和61年経過措置政令25条では”その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるもの”には支給しない(昭和61年改正法附則14条1項)とされているためである。

初稿2017/8/15
訂正2021/10/27
●遺族年金の受給資格25年に含むという誤りの訂正
●振替加算についての説明の改訂