オーバーユースについて |
オーバーユース(overuse)は日本語では「使いすぎ」という意味ですが、一つの運動を一生懸命することで体の一部に使いすぎがおきます。スポーツによるケガは急激におきる外傷ばかりでなく、オーバーユースにより慢性的に起きる場合を考えなければなりません。 |
オーバーユースの症状 |
オーバーユース疾患の代表的なものに疲労骨折があります。骨折は通常、転倒や衝突での1回の大きな力が骨に加わることでおきますが、小さな力が繰り返し加わることで、ついに骨が折れてしまう状態が疲労骨折です。 陸上選手の脛の骨や足の骨に起きる場合が多いのですが、競技によく使う所では下肢に限らず体中の骨に起きます。剣道選手では竹刀を振る前腕に起きることがありますし、ゴルファーの肋骨に起きてくる場合もあります。また、腰椎分離症も疲労骨折の1種です。 疲労骨折以外にもいろいろなオーバーユース疾患があります。上半身では野球肘・テニス肘が典型的なオーバーユースです。軽いものでは肘の腱や靱帯の付着部の炎症による痛みが出ますが、ひどくなってくると骨が剥離してきます。 下半身は上半身よりもオーバーユースの多い部分です。膝では跳躍競技に多いジャンパー膝があります。正式には膝蓋靱帯炎と言いますが、膝を伸ばす時に使う膝蓋靱帯がジャンプやダッシュの繰り返しで引っ張られ続けていると靱帯と膝蓋骨の間に炎症を起こします。 ランニング競技では膝の内側に痛みが出るガ足炎や大腿の外側に痛みを生じる腸脛靱帯炎があります。また、下腿の内側に起きるシンスプリントや足の裏に起きる足底腱膜炎もあります。アキレス腱もオーバーユースでアキレス腱炎やアキレス腱周囲炎となってきます。 スポーツで起きる腰痛もそのほとんどはオーバーユースと言えます。「腰が痛くて…」ということで、病院でレントゲンやMRIなどの検査をしても全く異常はなく、、腰はどんなスポーツでも使う部分であり、疲労がたまりやすい場所です。 |
成長期の身体 |
子供は大人のミニチュアでは決してありません。成長期の子供の体は成長に関わる特徴があります。成長期には成長期特有のオーバーユースがあります。成長期のオーバーユースの代表的な疾患であるオスグッド病を中心にこの問題を考えてみます。 骨の成長は骨端線と呼ばれる骨の末端に近いところで行われます。骨端線は軟骨の層であり他の部分に比べて弱く、傷がつきやすい構造です。 膝のお皿(膝蓋骨)と脛の骨(脛骨)の間には膝蓋靱帯という靱帯がありますが、この靱帯の脛骨の付着部が脛骨結節と呼ばれます。脛骨結節の骨端線にキズが入るのが、オスグッド病です 。膝蓋靱帯は膝を伸ばす時に働きますが、ジャンプやダッシュで大きな力を受けます。ジャンプやダッシュを含まないスポーツはありませんから、オスグッド病はどのスポーツでも発症します。しかし、ジャンプ動作の多いバレーボールやバスケットボールに多いのも事実です。他にも踵の骨の骨端線にも骨端症は起きます 子供の体は大人に比べて柔らかいと言えます。(最近は体の固い子供も増えてきましたが…)これは本来、関節を安定させる役割の靱帯がまだ十分な強度を持っていないことにも起因します。 そのために不必要に大きな動きを関節がするために体に過度な負担をきたしてしまいオーバーユースを起こすことになります。 |
中高年の身体 |
オーバーユースは中高年にも考えなくてはいけない問題です。成長期の体には骨端線を代表とする成長に適した構造がありますが、中高年の体にも特徴があります。キーワードを三つ上げると「もろい」「硬い」「弱い」です。中高年に多い骨粗鬆症では骨が「もろく」なり、変形を起こしやすくなり、骨折も多くなります。筋肉や関節は「固く」なり、可動域は狭くなっています。また、筋力も全体に低下しているので「弱い」ことが特徴です。この状態はオーバーユースを起こしやすい状態です。 比較的多い例として学生時代にスポーツをたしなんだ人が中年になり、自分の健康を考え、再び学生時代にしていたスポーツを再開すると短い期間でも簡単にオーバーユースの痛みが出てくることがあります。 近年は中高齢者のスポーツ愛好家も多く、仲間を募って定期的にスポーツを楽しんでいる人が多い状況です。しかし、体の衰えや体力は個人差があります。まずは自分の体を考えて「無理をしない」ことを考えるべきです。 |