アトランティスのこころ/スティーヴン・キング 1999年 評価:3
1960年、ローティーンの仲良し3人組(ボビー、キャロル、ジョン)と不思議な能力を持った老人の思い出を紡いだ「黄色いコートの下衆男たち」が上巻。1966年の一般的な大学での学生たちの怠惰な生活を描いた(キャロルのみが脇役で登場)「アトランティスのハーツ」が下巻の3/5。3人組に暴力を振るった連中の一人、ウィリーのベトナム戦争からの帰還後の1983年の生活を描いた「盲のウィリー」、1999年、初老となったベトナム帰還兵ジョンが元戦友の葬式からの帰り道の車の中で急死する様を描いた「なぜぼくらはヴェトナムにいるのか」、最後の「天国のような夜が降ってくる」では、同じく1999年にテッドの不思議な能力に導かれ再会を果たすボビーとキャロルが描かれ、これら3短編で下巻の2/5という構成になっている。
「黄色いコートの~」は、ささやかな魔法を持つ老人に影響される少年が主人公で、仲良し3人組の生活ぶりがキング独特のリリカルで現実的かつ丁寧な描写で描かれ、雰囲気的には「グリーンマイル」に近い、とても感傷的な良い作品。しかし、2つめの「アトランティスのハーツ」が340ページにわたって、トランプゲームの「ハーツ」に明け暮れる怠惰な大学生活が続くので、アメリカの大学生活を過ごした/よく知った人にはいろいろと面白く感じられるのかもしれないが、私にはかなりつまらない中編となる。「盲のウィリー」「なぜぼくらは~」はそれなりの面白さがあるが、とにかく「黄色いコート~」が良かったのに何でこんな展開になるのか、とちょっと興味を失いつつ読み進めたのだが、その分、最後の「天国のような~」では感動的な結末となる。
本作はキングがいつものホラー/ファンタジーだけでなく、60年代後半から70年代のアメリカのベトナム戦争を発端とした当時の若者の鬱屈した思想とその後を特に描きたかったものと思われ、全体としてのバランスは、特に他国人にとっては取れていないと感じてしまうのは致し方ないだろうと思う。
なお、本作は2002年に映画化されており、その際は「黄色いコートの~」と「天国のような~」がメインプロットとされている。それはそれで正解だと思うし、それなら観てみたい。