解夏/さだまさし 2002年 評価:3
表題作「解夏」の他、「秋桜」「水底の村」「サクラサク」の4篇を集めた短・中編集。
元々「精霊流し」などで詩が秀逸だったさだは、10作程度小説も刊行していて結構本格的。本作では、盲目になってしまうベーチェット病を患った教師、フィリピンから日本の農家に嫁いだ女性、ダム建設で立ち退きを余儀なくされた家族、ボケが進行する親を持つ中年男性という題材を選んでいるが、どの作品も、さだ本人の人間に対する優しいまなざしが根底にある。その分、人間の汚い性への掘り込みがやや足りないとも感じるが、反面、安心して読むことはできる。