ノー・カントリー・フォー・オールド・メン/コーマック・マッカーシー 2005年 評価:4
1980年、テキサス州西部。引退間近の保安官ベルの管轄地内で、麻薬取引をしていたギャング団同士の壮絶な殺人事件が起きる。生き残った者のいない事件ではあったが、現場から大金を持ち逃げしたベトナム帰還兵モスの存在と、殺し屋シガーが各地で殺人事件を起こしながらモスを追っていることをベルは突き止める。
表題通り、すでに一昔前の老保安官には訳のわからない犯罪の国となってしまったアメリカを突き放した視点で描き独特の雰囲気を醸し出している作品。いくつかの視点で中心となる人物がいるが、それぞれが密接にかかわり合うことはなく、エモーショナルな感想が沸き立つという内容ではないが、そのようなプロットを通じて、今生きている世界の異常性を描き切っているという点での魅力を秘めた作品。
なお本作は2007年にコーエン兄弟が映画化し、アカデミー作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の4冠を受賞している。原作を、その空気感も含め忠実に再現しており、助演のハビエル・バルデムの怪演もあって、双方ともに名作と言える稀有なコラボレーションとなっている。