白鳥とコウモリ/東野圭吾 2021年 評価:4


 2017年、東京竹芝で弁護士の白石が殺害された。捜査線上に浮かんだ倉木は逮捕後、自分こそが白石殺害と、33年前に愛知で起きた殺人事件の犯人であると自供する。しかし倉木の息子である和真と白石の娘である美令は、前者が倉木の自供、後者は倉木の自供にある、父白石の言動に違和感を感じる。

 ある一人の人間が加害者側、被害者側の親族となることによる、SNSが普及した現代で受ける誹謗中傷による苦悩も描き込んだところが東野圭吾らしいところ。本筋のミステリーもなかなか入り組んでいて難解でありながらわかりやすく進行していてぐんぐん惹き込まれる。

 一方で、2件は刺殺殺人なのだがそれによる避けられない返り血や血痕の扱いがかなり雑で、いやいや、血の動きをプロがみればそもそもの推理がおかしいだろと思ってしまう。最近の東野作品を多く読んでいるわけではないが、先日読んだ「沈黙のパレード」もそうで、プロット優先で細部が雑になってないか?と、好きな作家だからこそ危惧してしまう。