バトルランナー/スティーヴン・キング 1982年 評価:3


 2025年アメリカ。世界は貧富の差が激しく、世の中は荒廃して、一攫千金を夢見る貧困層の男たちが30日間追手に捕まらなければ10億ドル、捕まれば殺されるという、上流層の楽しみのためのTV番組が大人気だった。仕事もなく肺炎の娘を抱えるリチャーズは自分の命をなげうって妻と娘のために金を稼ごうと番組への出演を決める。

 1987年にシュワルツェネッガー主演で映画化され、私の記憶ではなんだかへんてこりんなボディスーツを身に付け、ボブスレーみたいな乗り物に乗って滑っていく絵が印象にあったのだが、原作からは過激なTV番組というベースだけを拝借して、ストーリー自体は全く異なることが判明。

 読み始めて、確かに読者を惹きつける筆致は紛れもなくキング作と思ったが、なんかストーリー展開が雑だしラストもかなり大味な感じで、登場人物の性格まで緻密に描き出す、私の知っているキングらしくない内容だなと思っていたら、読後に、本作はキングがリチャード・バックマン名義で出版した5冊の内の1冊と知って納得。

 時期的には「クージョ」と「クリスティーン」の間の作品。すでにホラー作家として確立した地位を得ていたころで、それに縛られずに好きにざっと書き上げたというものではないかと思う。展開が早く、アクションも多い。いわゆる映画向けの内容だが、小説としてはちょっと高い評価はできない。