グリーン・マイル/スティーヴン・キング 1996年 評価:5
1990年代アメリカ。老人ホームで余生を送るポール・エッジコムは、1930年代に死刑囚を収監するコールドマウンテン刑務所の主任だったころの想い出である、幼い双子の少女を殺害して死刑を宣告されてやってきた、黒人の大男ジョン・コーフィにまつわる忘れ難き奇跡を書き綴っていた。
本作は1999年にフランク・ダラポン監督、トム・ハンクス主演で映画化されているが、如何に原作に忠実に製作されたかがわかった。3時間という長尺なのだが、その分、原作のほとんどのエピソードが見事に再現されている。
多くの小説において、主人公またはそれに近しい人は、その言動や思想において自らの人道に外れたことの文章化は明確にはしないのが常だが、キング作品における主要人物は、決して欠点のない人物としては描かれない。非常に人間的であるからこそ、今作のようなファンタジー系の作品であっても、そのファンタジー要素以外の面で現実性を持たせることになり、そこから醸し出される人間臭さが魅力となる。
本作では人間という生き物の不合理性を全編を通じて謳っており、死刑囚コーフィの存在を深く考えさせることになる。一方でモダン・ホラーの第一人者らしく、ホラー的描写はどこまでも怖く、一方で「スタンド・バイ・ミー」などで見せる抒情性も最大限に織り込まれているという、キング作品の中でも最高峰に位置する作品の一つと評価。