日日平安/山本周五郎 2006年 評価:4


 山本周五郎の1944年~1960年に掲載された6編からなる短編時代小説。

 全て江戸時代後期を舞台としたものだが、山本周五郎らしい人情物語は、時代を超えて人の心を打つ。主題が人情だから、私にとって、珍しく短編を読みたいと思わせる作家のひとり。

 なお、「日日平安」は黒澤明の「椿三十郎」の原作となっているが、映画版はストーリーの骨格は同じだが、主人公の三十郎が映画らしく、凄腕の剣士として描かれている。一方原作は単なる腹を空かせた浪人でしかない。しかしそんな中でも浪人の人としての魅力も表現しており、さすがは山本周五郎と唸らせる作品。