血の収穫/ダシール・ハメット 1929年 評価:3


 探偵社のコンチネンタル・オプは、鉱山町「ポイズンヴィル」にある新聞社長の依頼で現地に赴くが、その地で依頼主は殺されてしまっていた。ポイズンヴィルはギャングたちの抗争のまっただ中にあり、街を浄化しようとした依頼主はその巻き添えになったのだった。

 ハンフリー・ボガート主演で映画化された「マルタの鷹」が有名な、ハードボイルド小説の先駆者ハメット初の長編小説。「複数の犯罪組織の対立によって荒廃した町に主人公が現れ、それぞれの陣営に接触して扇動や撹乱を行い、彼らの抗争を激化させて殲滅する」というプロットの走りとされ、実際、黒澤明は「用心棒」製作時に本作をかなり参考にしたと語っている。

 そんな、歴史的にも価値のある本作だが、ハード・ボイルド的な中身に特色があっても、いろんな抗争に突撃しても主人公はほとんど傷を負わないというスーパーマンとして描かれているのと、スーパーな活躍を描くあまり、ストーリーがかなり破綻していること、登場人物が登場してはすぐ消えていき、また、数も多いため覚えづらいというところもあり、純粋に作品としての評価をすると普通だと思う。