推定無罪/スコット・トゥロー 1987年 評価:3


 有能な地方検事であるラスティは、同僚の魅力的なキャロリンと一時期不倫していたが、その縁が切れた後、彼女は何者かに殺害されてしまう。ラスティはその事件を担当することになるが、現場に残っていたグラスから彼の指紋が採取され、ラスティはキャロリン殺害容疑で起訴される。果たしてキャロリンを殺害したのは誰なのか、この事件は陰謀なのか。

 1990年にハリソン・フォード主演で映画化されヒットした。作者であるスコット・トゥローは検事補という異色の経歴を持ち、本作ではそれを生かして、法廷での検察側と弁護側のやり取りがとても興味深く、面白い。一方で、なぜ高評価にならないかと言えば、主人公であるラスティを始め、彼の家族、浮気相手キャロリンという人物像、生活感に魅力が薄いからだ。特に浮気が原因で容疑をかけられるラスティは別れたキャロラインに未練タラタラで、敏腕検事とはあまり思えないし、人間的魅力が薄いので、いまいち物語に惹きこまれない。

 本作に関しては、もちろん法廷部分は原作の方が緊迫感はあるけれども、原作を読んでいれば、ハリソン・フォードが主役というだけで主人公に魅力が付加され、余計なものを排除した単純なストーリーにしたことでエンタメ性の高い映画版の方が面白いと思う。