野菊の墓/伊藤佐千夫 1906年 評価:3
中編である「野菊の墓」1906年の他、短編の「浜菊」1908年、「姪子」1909年、「守の家」1912年の計4編からなる伊藤佐千夫の作品集。
「野菊の墓」は、今の歳だと13歳の政夫と15歳の民子の、恋心をもっての手をつなぐことさえなかった二人の純愛物語。文章上の秀でた芸術性は特にはないものの、この青春時代の控えめで意地悪く、かつ正直な心情の上で揺れ動く二人の機微な気持ちがストレートに表現されていて、それが長年名作と呼ばれ続けている所以だと思う。悲劇的な結末は武者小路実篤の「愛と死」を彷彿とさせる。その他の3篇は特に取り立てるものはないと感じる。
ただ、この年代の作品は、やはり文体が古すぎて読みづらいと感じてしまうのは致し方ない。