ミザリー/スティーヴン・キング 1987年 評価:5


 女性主人公の人生を描く『ミザリー』シリーズのベストセラー作家ポール・シェルダンは、シリーズにピリオドを打ち、新作をもって車で移動中に雪嵐に見舞われて事故を起こして重傷を負い、通りかかった元看護師のアニー・ウィルクスに救出される。ポールは人里離れたアニーの家で治療を受けるが、『ミザリー』の熱狂的ファンであるアニーは、ミザリーシリーズの最終巻の結末に納得せず、続編を書き下ろすことを彼に強要。しかし、大雪で半ば隔離され、ケガで身動きの取れない閉鎖的な状況の中、アニーの異常性が徐々に露わになる。

 身動きできない病人の、精神異常者を前にした恐怖というのは単純なシチュエーションなのだが、そこに小説家の作品を生むまでの苦労とか、躁鬱があり常時完全な異常者ではないというアニーという人間像がちりばめられることで、単純ではないサイコスリラーに仕上がっている。その辺りの微妙な塩梅は、さすがスティーヴン・キングという感じ。

 1990年の映画版では、特にアカデミー主演女優賞を受賞したアニーを演じたキャシー・ベイツの怪演が印象的。原作も素晴らしければ、映画も良かったという代表的な作品。