君よ憤怒の河を渉れ/西村寿行 1975年 評価:2


 ある日、全く覚えのない強盗強姦罪と窃盗罪の濡れ衣を着せられた検察庁検事の杜丘は、連行の隙を縫って逃走。北海道を始め東日本を逃亡しつつも、自分をこんな目に合わせた背景には、濡れ衣を着せた人物の正体などから巨大な薬学界の陰謀があることを突きとめる。

 様々な種類の小説を書く西村寿行の、ハードロマンという分類の処女作。内容は、目まぐるしく主人公への危機が訪れ、それを超人的にクリアしていく、というもの。よくありがちなアクション映画のようだなぁと思ったら、やっぱり1976年に高倉健主演で映画化されていた。映画なら考える暇もなく目の前に繰り広げられる逃走劇に没頭出来て、まぁ楽しめることもあるだろうが、小説だとやはり自身で主体的に考える時間を持つことになるので、どうしても突飛な展開の都度、ご都合主義という感想になる。

 また、小説の肝になるトリックは突飛なもので、そのトリックありきで謎解きのストーリーを作った感が強く、とても違和感を持ったが、映画版では完全にその部分はカットされていて、終盤は全く異なる展開になっているようだ。そりゃそうだろうなぁと納得。