エデンの東/ジョン・スタインベック 1952年 評価:3


 19世紀後半から第一次世界大戦に至る時期のアメリカ、カリフォルニア州サリナスを舞台に、旧約聖書の創世記のカインとアベルの物語をモチーフとして、アイルランド移民であるサミュエル・ハミルトン家と、東部から来たサイラス・トラスク家の2家族を主軸に、サイラスの息子アダムとチャールズ、アダムの息子である双子のアロンとカレブという三代のトラスク家の歴史を描く。

 トラスク家の人々を巡って、まずはサミュエル・ハミルトン、そしてアダムの中国人召使リーが人生の指針を示す重要な役割で絡んできて、実際の主人公であるトラスク家の人々は単に物語の進行上の配置の上にいるだけという感じがする。また、旧約聖書を題材にしているだけあって、市井の人間としては聊か極端な人物たちで物語が進行していくので、いまいち物語の中に入り込みづらいのだが、それでも話としては面白いし、サミュエル・ハミルトンとリーの言葉は含蓄が深くて興味深い。

 因みに、ジェームズ・ディーン主演で有名な「エデンの東」の内容は、本作の第一次世界大戦の時代のみを題材に描いており、全体の1/4程度の分量しかない。また、映画では重要な役割を持つリーも出てこないため、単にアロンとカレブの青春時代の物語になっており、原作とは主題も大きな枠組みも全く異なる。映画に忠実に受け継がれたのは複雑な家庭環境で複雑な精神状態を持ったキャル(カレブ)の心情。ジミーの育った境遇もあって、まさに嵌り役となり、それだけで映画の価値はあるものと思う。