ゴールデンボーイ(恐怖の四季 春夏編)/スティーヴン・キング 1982年 評価:5


 スティーヴン・キングの、ホラーに分類されない中編作を集めた「恐怖の四季」の「春夏」版。キング原作の最良の映画化作品ともいわれる「ショーシャンクの空に」の基になった「刑務所のリタ・ヘイワース」と、これもブライアン・シンガー監督で1998年に映画化されたものの、終始暗い雰囲気なためかほとんど話題にならなかった「ゴールデンボーイ」の2作が収められている。

 「刑務所のリタ・ヘイワース」は忠実に映画化されているので、映画の通りの内容なのだが、その空気感は映画版に劣らないほどで、「スタンド・バイ・ミー」でも感じさせられたキングの抒情性を堪能できる。

 「ゴールデンボーイ」は元ナチスのユダヤ人虐殺の戦犯と秀才の少年の関係から、如何に双方が内面的に蝕まれていくかを逐一描いた350ページという長編並みの作品。こちらは精神的な怖さを感じさせられる。

 2作品とも無駄なくグイグイと惹きつける魅力を持っていて、さすがはキングと唸らされる傑作。