サイダーハウス・ルール/ジョン・アーヴィング 1985年 評価:3
孤児院の影の稼業、堕胎手術を施しているラーチ医師のもと、20代まで医学の実地研修を受ける形になっていた。孤児院で生まれたが貰い手がなったホーマーは、ある日孤児院に堕胎のために訪れたウォーリーとキャンディというリンゴ農園(サイダーハウス)を営む裕福で美しい若いカップルに、外の世界に連れ出してくれるよう頼む。
1999年にラッセ・ハルストレムが監督し、トビー・マクガイア、マイケル・ケイン、シャーリーズ・セロンらの出演で映画化された。特にラーチ医師を演じたケインとキャンディを演じたセロンがはまり役だったので、小説もそのイメージがついたままだったのだが、それはプラスに作用した。
映画版では「リンゴ農園のルール」という題名の持つ意味が解りづらかったのだが、小説では様々な場所、人種の中にある「ルール」がいくつも、何度も繰り返し出てくるので「ルール」は作る側には理解できても、それが本当に必要なのか、正しいものなのかはわからないという主題が読者に鮮明に刷り込まれる。
1000ページ以上の長編となる中で表現が冗長という感想ももってしまう、小説らしい小説で、決して登場人物みんなにとって幸せという結末ではないのだが、それが人生、それが時の移り変わりということをしみじみと感じさせるラストは印象的だ。