シャイニング/スティーヴン・キング 1978年 評価:5


 元高校教師のジャックは暴力沙汰を起こし高校を解雇されるが、昔の飲み仲間の斡旋で、ジャックは冬季期間のホテル管理という仕事を得る。晩秋の時期に妻と5歳の息子と共に閑散としたホテルに移り住むが、そのホテルには過去、そこで起こった事件の怨念が渦巻いていた。

 冬季のホテルを管理する家族が、超能力を有する5歳のダニーを媒体として活発化した過去のホテルにまつわる事件の怨念の情により恐怖に落とし込まれるまでの描写が、家族3人の過去の出来事を背景にして丁寧に描かれており、単純なホラー小説にとどまらない。それぞれの過去の経験をベースに、お互いが各人の行動に疑心暗鬼になっていく胸の内を外側のホテルの怨念からの圧力と共に描くことで内外からの心理的スリラーとなっていて、そこがホラーの巨匠たるキングの秀逸なところ。

 キューブリックの映画版を先に観ていたため、どうしてもジャックにはジャック・ニコルソンの面影を浮かべてしまうのだが、それがマイナスということはない。確かに映画版とはかなり違う内容で、原作者のキングがキューブリックの映画の出来に反発していたということには納得するが、やはり映画は映画として傑作だと思うし、小説自体も映画版に劣らない傑作だと思う。