流/東山彰良 2015年 評価:4


 舞台は台湾。台湾人である葉秋生は高校時代に敬愛する祖父を何者かに殺される。兵役についた後、野菜の卸業者として日本と行き来していた彼は、あることをきっかけに祖父殺しの手掛かりをつかむ。2015年の直木賞受賞作。

 前半部分は青春随筆という感じの短編の連続で、舞台が台湾なので日本とはずいぶんと異なっていて、異国の地のその内容はどうしてもノスタルジーなどを感じず、共調もできないところがあり正直惹かれるものがなかった。しかし、段々と祖父殺しというミステリー要素にまつわるストーリーが展開してきてからは半ば強引に物語に引きこまれていく。かつては日本と、今は中国と確執のある台湾という土地における生活実態は衝撃的で、そこで育った主人公の人生に向けた視点、中国本土への畏怖などが非常によく表現されている。中国人のバイタリティを感じるし、(一緒に居たくないなぁという)悪いところも随所に感じられるのだが、本作の持つパワーは確実に感じられる。