女の一生/モーパッサン 1883年 評価:2


 修道院で教育を受けて家に戻った貴族の娘ジャンヌは、すぐに魅力的な男性に出会い結婚するが、相手の男は結婚前から不倫を繰り返し、逢瀬の現場で不倫相手の夫に殺される。一人息子ポールをただ一つの生きがいとしたジャンヌだったが、ポールは成長すると娼婦と暮らし、ただ母親に金をせびる出来損ないの男になっていく。

 フランス・リアリズム文学の名作と言われている作品。確かに文章とか話の展開自体には魅力はあるのだが、如何せん、内容が現代人にとっては古すぎるし、登場人物が主人公を含めろくでもない人間ばかりなので腹立たしい気持ちで読み進めることになる。

 結婚した夫が不倫三昧の暴力的な男で、生まれた息子に見向きもしないというのは当時の貴族の実態を表しているのかもしれないので、そこは主人公のジャンヌが可哀そうなのかもしれない。しかし、貴族出のジャンヌは生活力がなく、夫からの愛情を得られない矛先を息子を溺愛することに向け、当たり前だが息子は一人立ちしていくことになるので、その後は右往左往して金をむしり取られる子離れの出来ない母親となっていき、そんな状況になっても自分の考えに反省することもなければ生き方を変えて立ち向かおうともしないジャンヌには同情も何もわかない。夫も救いようがないアホだし、ジャンヌの母親もブクブクと太り過去の美しかった思い出に浸りつづけ、ろくに歩くこともできないようになってみじめに死んでいく。まともなのはジャンヌの父親である男爵だけで、誰にも感情を動かせない。

 本作が当時の貴族に対する痛烈な風刺小説であるというのなら価値を感じることができるのだが、調べてもどうやらそういうものではないらしいので、高い評価は到底できない。