絶望/ウラジミール・ナボコフ 1936年 評価:2
チョコレートのセールスマンをしていたゲルマンは、ある日プラハの森の中で自分にそっくりの浮浪者フェリックスと出会い連絡先を交換する。セールスが上手くいかず、人生に嫌気がさしたゲルマンは、フェリックスを殺し、妻に生命保険金を受け取らせるという犯罪を敢行する。
「ロリータ」で有名なナボコフがロシア時代に執筆した長編。主人公のゲルマンが自意識過剰で、自画自賛している犯罪計画も全くいい加減。妻は頭が弱い感じで従弟と浮気を繰り返し、その従弟は絵描きと自称しているが全く絵の才能はなくいつも借金を抱えてばかり。フェリックスもゲルマンの陰謀になぜに気付かない?という鈍さ。このように主要登場人物4人がみんなアホだらけで、延々とゲルマンの一人称での語り口が続くのが結構きつい。
一方ラストで、実はフェリックスは全くゲルマンに似ていないことが判明。結局この小説はゲルマンの都合の良い思い込みの書き物でしかなかったという結構奇怪な内容で、その点はナボコフらしい言葉の魔術を感じるのだが、とにかく作品としては読み進めるのに苦労するため、評価は2にせざるを得ない。