JR上野駅公園口/柳美里 2014年 評価:2


 1933年に福島県相馬郡で平成天皇と同日に生まれ、高度経済成長期に家族と離れて東京の地で家族のために金を稼ぐ生活を送ったものの息子は二十を超える頃に早逝。やっと年金生活が送れるかという頃には妻とも死別し、生きる気力もなくなった上野公園のホームレスの話。

 ドキュメンタリーかと思うほど客観的で、物語的な大きな動きはない内容。淡々と一人のホームレスの人生を掘り下げていき、そこから描き出される日本の知られざる闇の世界、生きる意味を炙り出す。そんな日本の実情を描いているからか海外からの評価が高いようである。

 一方、穿った見方をすると、辛評はし辛い書き物である。日本の現状を鋭く描いた内容のどこにケチをつけるか、と問われれば答えはない。しかし、私は単なる読書好きの一般人であり、やはり小説から何か人生に役立つものを得たいとか、考えさせられたい、読み物として面白いかという観点で評価をする傾向があるので、その観点からはつまらない、というのが正直な感想。文章的にも結構不要、短縮可能な箇所も多く、そのような部分は飛ばさざるを得ないし、主人公の人生に同情はするものの、ではそのような境遇の人に何かするべきか、となると冷淡な私は何も思い浮かばない。