デッド・ゾーン/スティーヴン・キング 1979年 評価:4


 ニューイングランドの高校教師ジョニーは、結婚を考えている同僚のサラとのデートの帰りの交通事故で5年弱に及ぶ昏睡状態となる。奇跡的に目覚めたとき、かつての恋人サラは既に別の男と結婚しており、ジョニー自身は人の肌や所有物に触れると、それに関する過去、現在、未来の映像を見ることができるという特殊能力を持ってしまう。

 平凡な男の、特殊能力を持ってしまった結果としての活躍を描くのではなく、そういう能力を持ったがために普通には生きられない悲哀と、エキセントリックな将来の大統領候補が、いずれ人類を滅亡に向かわせるような政策的選択を行うことを感知してしまうことによる、彼自身の行動への決断が中心に描かれる。

 本作は4年後には映画化され、その作品が大好きなこともあって本原作も読んでみたのだが、さすがはスティーヴン・キングで、ホラーとしてはもちろん、人間ドラマとしても一級の作品である。映画よりも、大統領候補の政治家の掘り下げがしっかりしているのと、主人公ジョニーの苦悩が痛いほどよくわかる。逆に、映画のようにスピーディーには展開しないため、ジョニーが授かった特殊能力の奇抜さに非現実性をより感じてしまい、ファンタジー的な感想が強くなってしまうのがマイナス点である。