博士の愛した数式/小川順子 2003年 評価:3

 家政婦の「私」の派遣先には、80分しか記憶がもたない還暦を越えた元数学者がいた。彼はこよなく数学を愛するが、他に全く興味を示さない。「私」は困惑するが、「私」に10歳の息子がいることを知った博士は、次の日からは息子を連れてくるようにと言う。

 シングルマザーの母親、10歳の純粋な男の子との新鮮な関係の中で心が解れていく元数学者、元数学者の数字に対する講義を通じて数学に興味を持つ親子の遅々とした人間関係の修復と構築が描かれるが、多分、元々理系の人間にとっては数学者の言うことはあまり目新しくはなく、単なる、障害を持った老齢者とちょっと不遇の親子の物語としか言いようがない。