特捜部Q カルテ番号64/ユッシ・エーズラ・オールソン 2010年 評価:4
過去の未解決事件を捜査する特捜部Qのボス、カールとアシスタントのシリア人アサドらの活躍を描くシリーズ4作目。1987年の同じ時期に複数起こった失踪事件の真相を追っていたカールらは、その失踪者が、スプロー島にあった女子収容所と関係のある者たちであることを突き止める。また、この事件を探っていくうちに、現在の2010年における極右政党の陰の実力者クアト・ヴァズが背景に関わっていることが判明する。
私が読んだ1作目と本作の間で、新たに二重人格できつい性格の女性アシスタントが加わったり、カールの元相棒で今は寝たきり状態にある一つ屋根の下に住むハーディに少し変化の兆しがあったりと、カールの日常生活の中の進展もなかなか魅力的だが、ミステリーとしての質も前作から決して落ちてはない。スプロー島の女子収容所は実在したもので、デンマーク史における闇部分を題材にして過去と現在を行き来する展開は物語を奥行きあるものにしている。
一方で、カールとアサドのやり取りやその描写の中に、アメリカ小説っぽいユーモアをふんだんに入れるようになっており、その点でデンマーク産小説としての特異性が薄れているところが少々残念ではある。