特捜部Q 檻の中の女/ユッシ・エーズラ・オールソン 2007年 評価:4


 以前の事件で信頼する同僚を殺され、一人を全身不随とされてしまってから捜査への情熱をすっかり失ったコペンハーゲン警察の凄腕の警部補カール・マーク。彼はデンマークが新しく設置した、迷宮入りしている事件を取り扱う部署の責任者に指名されるが、その部署は名ばかりで、オフィスは窓もない地下室、部下はシリア系のアラブ人アサドの一人だけ。乗り気でないカールが5年前の女性議員失踪事件の再調査に着手したところ、次々と驚きの新事実が明らかになる。現在7作品まで刊行されている人気シリーズの1作目。

 迷宮入りした原因が過去の杜撰な捜査が原因だったりするのだが、なぜそんな杜撰だったのかの裏がなかったり、中盤あたりで犯人が分かってしまうというマイナスポイントはあるのだが、カールの性格付け、相棒であるアサドの謎めいたところ、登場人物のきめ細かい描写などが、本筋の捜査ストーリー以上にしっかり描かれていて、なかなかに奥行きのある作品。この筆致ならシリーズ化されるのも納得で、次作も読んでみたいと思わせる。評価的5に近い4。