人魚の眠る家/東野圭吾 2015年 評価:3


 IT機器メーカの若き社長である播磨和昌の6歳の娘がプールで溺れ、脳死状態となった。そんな娘の傍らで悲嘆にくれる和昌と妻の薫子であったが、こちらの呼びかけに娘の指の反応を感じ取ったことから、脳死判定を受け入れるつもりだった二人はその考えを覆し、正常に戻ることは100%ないとの医師の言葉に反し娘の看病を継続するとともに、和昌の会社の技術力を使って、娘の脊髄に電気信号を送ることによって筋肉を動かす試験を繰り返す。

 技術系出身の東野らしい科学的な内容であるとともに、かなり自身も脳死や臓器移植の勉強をしたのであろう、それらに関する詳細な議論が展開される。しかし、その主題材に焦点が当たりすぎていて、ストーリーとしてかなり破綻している。特に妻薫子の行動が奇抜であり、最後では包丁を振り回して警察を呼べとなって独演会となるが、どうにも上げてしまった拳の落とし所がなくなって、かなり無理なオチにせざるを得なかった感を強く感じる。結果、実質的な主人公である薫子の性格描写に一貫性がなく、なんとも中途半端な作品になってしまった。