魔界転生/山田風太郎 1967年 評価:4
忍法と西洋の黒魔術の融合から編み出された、この世に生まれ変わりたいという強い欲望を持った強者が忍術を施された女体と交合することで、そのままの姿で生まれ変わる魔界転生という魔術から生れ出た剣豪が大暴れという奇想天外な設定をベースに、江戸時代初期の名を成す剣豪や柔術士などの息詰まる戦いを描いた山田風太郎忍法帖小説の最高峰と呼ばれている作品。何度か映画化、舞台化されている。
魔界転生する剣豪は有名どころでは天草四郎時貞や宮本武蔵。その他にも歴史好き、剣豪好きには知られている荒木又右衛門、田宮坊太郎、宝蔵院胤舜、柳生如雲斎、柳生宗矩。これら7人が、幕府の転覆を狙う黒幕の元、生を得るのだが、仲間に引き込みたいと思っていた柳生十兵衛が、意に反して自身の藩のために生身のまま戦いを挑むというストーリー。
今のアメコミ系のヒーロー大活躍という内容と決定的に異なるのは、転生しても一人の人間でありスーパーマンではないという点。上役の命令にはそこそこ忠実だし、何十人もの相手に勝てるというものでもない。転生衆は、十兵衛と1対1で戦うのだが(このストーリー設定が実に上手い)、十兵衛側に加勢や偶然もあって一人づつ切り倒していく。奇抜な設定がベースにありながら、それ以外はそう滅茶苦茶ではなく、元々ストーリーテリングに定評のある山田だけあって、徹底したエログロ娯楽作品に仕上がっており、難しいことを考えずに楽しめる。