それでも人生にイエスと言う/ヴィクトール・フランクル 1993年 評価:3
第二次世界大戦時にアウシュビッツ収容所などに収容されていたフランクル医師が、解放から約1年後(1946年)に行った3つの講演の内容を記したもので、そのため、収容所時代を綴った「夜と霧」との関連性が深い。
生きいく中では、「私は人生に何を期待できるか」ではなく、「人生は私に何を期待しているのか」を問うべきという、本書の中の一節は有名。確かに前者の考え方は、自分の限界やこの先の自身の能力の向上範囲を知った時期には、投げやりで快楽を求める方向に行ってしまい兼ねない思想であり、人生の楽しさを感じるのは自分の好きなことをしている時、という制限が出てくることになる。そうではなく、世の中にはたくさんのことがあり、それをどう掴むのか、言ってみれば人生の選択は自分が行うものであり、それにより人生はいかようにも変わりえるということ。この“コペルニクス的発想の転換”は確かに価値観を変えさせる重要なものと感じる。
全体の1/4が、比較的に平易な言葉で行われたフランクルの講演内容を、日本の精神科医が精神論的に解説するもので、その部分は正直難解で私にはよくわからない。だけども上述の考え方は間違いなく私の心に残るもので、その一つだけとっても読んで良かったという書籍である。