白銀ジャック/東野圭吾 2010年 評価:4
巨大スキーリゾート新月高原スキー場は、斜陽するウインタースポーツ産業の中で何とか規模を維持していたが、スキーシーズン開始直後に、「スキー場に時限爆弾を設置してある」という、身代金を要求するメールが届く。スキー客にけが人を出さないよう、身代金を渡すたびに犯人は安全なコースを教えてくるが、犯人の手がかりを得たいというパトロール隊員の行動が裏目に出て、犯人は爆破を予告する。
本作は完全にエンターテイメントとして執筆されたと考えられ、そのような作品でもこの作家の上手さは際立つ。登場人物たちは、何気ない会話や行動により人物像が明確化され、展開もスピーディで無駄がない。よくよく考えると雑なところもあるのだが、それを感じさせないほど、話の中に読者を引き込んでいく。サイドストーリーもなかなか魅力的で、特に後に残るという作品ではないものの娯楽作品としてレベルが高い。