リカーシブル/米澤穂信 2013年 評価:3


 中学校入学を控えるハルカは、父親が会社の金を着服して失踪した関係で、父が再婚した義母ヨシエとその連れ子サトルと共にヨシエの故郷である過疎化が進む地方都市の坂牧市に引っ越す。中学生活が無難に始まったが、一方で、江戸時代から伝わる民話や高速道路の誘致に失敗したという過去のある坂牧市の市民たちの少し異様な生活ぶりを目にするようになる。

 文体的には、ところどころハルカの余計な(その場面にそぐわない)気持ちなどの描写があって、今風の流行り的なものであり、特にこの作者に特有なものは感じないし、ミステリー的な展開に転じる後半には無理な設定をどうしても感じてしまう。一方で、複雑な家庭環境を背景にした思春期の娘の心情は丁寧に描かれており、その点は評価できるし、退屈なく読み進めることはできる。