人間失格/太宰治 1948年 評価:4
大庭葉蔵は生まれてからこのかた、道化を演じて人気者と扱われてきたが、実は人間不信で孤独に苛まれる内面を持っていた。大学生になってからはうわべだけの学生運動や酒とタバコと女に溺れ、社会人になってからも猥雑な漫画を描いては稼いだ金を酒につぎ込む毎日。知り合った女と入水自殺を図り、薬中毒にもなり、自分自身で「人間失格」の烙印を押す。
入水自殺した太宰治最後の中編であり、その内容から明らかに自伝的要素を持つ。実家が金持ちで、のほほんとした学生時代を送るという内容は、この時代の小説にはよくある背景であるが、主人公葉蔵はその生きざまを自分自身で分析し、それを自堕落で唾棄すべきものと認識しているのだが、どうにもならない。その、練りに練られた文章で掘り下げる心情の描写が、他の同時代の文学者と決定的に違うところだと思う。
確かに文学的に高密度でかつ芸術的でもあり、唯一無二の作家である。