母性/湊かなえ 2012年 評価:3
女子高校生が、自宅の庭で自殺未遂で倒れているのを祖母が発見した。警察の捜査の結果、母親が娘を精神的に追い詰めたということに疑いが向けられる。
湊かなえ作品によくある(というより、本作、「告白」「Nのために」の私が読んだ全3作品すべて)、真相を複数の人間の書き物により本質(事実ではなく)をあぶりだしていくという内容。本作では娘と母親の二人の書き物がその対象となる。相変わらず、社会に向かっては明言できないような現代の精神的病巣を、小説という媒体を使用してその異常さや身勝手さを凶弾する。母親は、愛する自身の母に認められたいという病的なまでの想いから娘を愛した振りをして生きてきた。娘はそんな母親の内面は理解せずに、自分のために苦労している母親に認められたいという気持ちを内に秘める。
本作の登場人物はほぼ、どこかがいかれている人々なのだが、決して現代社会の中で特異、というほどではない。そのような現代に異常性を気づかせるような波紋を落とす作品なのだが、構成や手法が既読の2作品と同じで、いまいち発展したところがないため、その分2作品より評価は落ちる。