菊と刀/ルース・ベネディクト 1946年 評価:3
小説ではなく、文化人類学書。第二次世界大戦末期に、終戦後の日本の統治の参考にすべく、アメリカ政府からの依頼を受け、アメリカにいながら日本文化の研究や日系人への聞き取りなどから日本人の精神的構造に関する報告書「日本人の行動パターン」を1945年に執筆した女性文化人類学者ベネディクトが、当該書をベースに一般的日本人論として加筆修正したものが本書となる。
「日本人の行動パターン」は、日本に来て研究したのではなく、アメリカに居ながらにして、しかも終戦の1か月後に完成したものでありながら、非常に中身の濃い著書。確かに内容的に誤解や懐疑的なものもあるのだが、日本人をよく研究していると思うし、「恥の文化」という解釈には、そのような考え方はあると納得できるものである。色々と反論も多い作品らしいが、この種の書物に完全な正解などなく、自身をよく知った人間が、いろいろな側面から人類学をアプローチすればこのような見方があると解釈し、それにより慧眼するところがあればそれでいいのだと思う。