赤い指/東野圭吾 2006年 評価:4
サラリーマンの前原昭夫は年老いて認知症の母と妻、小学時代からのいじめにより引きこもってゲームばかりしている中学3年の息子と4人暮らし。ある日、妻の切羽詰まった電話に急いで家に帰った昭夫は、庭に、息子が殺めた少女の絞殺体を発見する。息子を匿おうとする妻の威勢に押された昭夫は近くの銀杏公園に死体を破棄するが、警察の手はすぐに伸びてくる。また、後で知ったが、作者の「加賀恭一郎シリーズ」の一つであり、加賀の父との確執も並行して描かれる。
シリーズになっているほどで確かに加賀は魅力的。また、長編とは言え比較的短い作品で、無駄な回り道なく、前原の家族事情も端的に的確に描かれ、物語の中心周りのみで話はどんどん進むので非常に面白い。逮捕までの過程も緊迫感があるのだが、ただ、犯人扱いされる前原の母が認知症のフリを長く続けていたという設定はいくら何でも無茶。別に「フリ」をしてなくても話としては成立するのだから、ちょっと蛇足だった気がする。