破壊された男/アルフレッド・ベスター 1953年 評価:4
「虎よ!虎よ!」のアルフレッド・ベスターの処女作。2300年代。世界は、人の心を読み取れるエスパーの組織により、殺人事件は未然に防げ、犯罪自体もすぐに解決できるようになっている。巨大企業の社長ベン・ライクは、エスパーを雇い、殺人ができないこの世界でのライバル会社の社長殺害を企て、首尾よく殺害に成功したものの、その後、一流エスパー捜査官パウエルとの壮絶な精神的死闘がくり広げられる。
「虎よ!虎よ!」もそうだったが、ベスター作独特の世界観とスピード感あふれる文章による独自のSFワールドが繰り広げられる。その先見性と現代的な筆致はとても1953年という今から60年以上前に書かれたものとは思えないほどで、全く古さを感じさせない。
また、登場人物の多様性と深堀りも秀逸で、一旦、ライクに敗北したパウエルの再調査の内容も事前の伏線が十分に生かされているなど、ストーリー性も際立ったもの。ただ、少し難解なところも多いので、人によって評価はわかれるかもしれない。