死顔/吉村昭 2006年 評価:3


 5つの短編からなる吉村昭の遺作。5つのうち3つは自叙伝であり、うち「二人」と「死顔」は、10人兄弟のうち、ついに最後の二人になってしまった作者が、次兄の死を題材にして記した死生観となっている。

 特筆するような作品ではないと思うが、作者の、冷徹である一方で感情に流されない正しさというものを感じさせる死生観は、これから死を迎えるであろう自分にとっても参考になる考え方であり、あたふたすることなく、無駄な延命などせず、また、そうさせない意思を持ったままで死を迎えたいと思わせる良書。