虎よ!虎よ!/アルフレッド・ベスター 1956年 評価:4
火星と木星の間で攻撃を受けて漂流していた貨物宇宙船「ノーマッド」の中で、唯一生き残った屈強の男、ガイヴァー・フォイル。半年に及ぶ漂流の末、近くを通りかかった宇宙船「ヴォーガ」に助けを求めるが、気づいたはずなのにそのまま立ち去ってしまう。フォイルは「ヴォーガ」に対する憎悪の念だけを胸に、瞬間移動能力「ジョウント」などを駆使した復讐の旅路をたどる。
SFの傑作として必ず取りざたされる作品。この作品で使われた造語「ジョウント」は、本作品後、瞬間移動を指す言葉として定着し、舌で歯の裏のスイッチを押すことで作動する身体加速装置は日本の「サイボーグ009」や「X-MAN」など様々に流用されているというほど、革新的な内容である。ストーリーは荒いところも多いのだが、フォイルという野性味あふれた男の躍動感と極端な性格付け、形而上学的な思想が台頭してくるという奇想天外なラストなど、60年以上前にかかれた作品とは思えないほど、今読んでも極めて独創的(これほど視覚的に魅力ある内容であるにもかかわらず映画化されていないことからも証明される)で、確かにSF小説の金字塔といわれるだけの作品である。