砂漠の惑星/スタニスワフ・レム 1964年 評価:4
6年前に琴座のレギスIIIに着陸した後音信不通となったコンドル号探索のため、無敵号は、当該惑星に着陸した。砂漠と海からなる地球によく似た環境下でコンドル号は発見されるが、さしたる外傷はないものの、乗組員たちは宇宙船の周りですべて死に絶えていた。彼らに何が起こったのか、そして無敵号に対しどのような災難が降りかかるのかを、副船長のロハンの目から描く
「エデン」(1959)※未読、「ソラリスの陽のもとに」(1961)とともに、レムのSF3部作を構成する作品。他のSF作品と異なり、劇的な展開があるわけではないが、その緻密で普通の想像力を超越した未知の惑星や環境の描写が、人類に危害を加えると思われる対象がなかなか明らかにされないというストーリーも合いまって、非常な緊迫感を生むことになっている。その結末は単純な異星人ではなく、数百万年前に他の先進的な宇宙人が惑星に残していった微小な人工生命体の進化の結果という、人間の思考範囲を超越したものであり、レムはそのようなに発展した星を多数の犠牲者を出して征服する意味にさえ疑問を投げかける。私自身、元々宇宙では人類の尺度で考えられない事象が数多あるはずと考えており、本作のような内容のほうがすんなり受け入れることができる。
ビジュアル的に映像化は難しいと考えられてきた内容だが、今の技術なら映画化は可能ではないか。まぁ、今の単純化した観客たちがこの難解で思想的なストーリーを好むかは甚だ疑問だが。