自負と偏見/ジェイン・オースティン 1813年 評価:4


 昔から名作と名高い作品だが、このような軽妙な内容だったとは思わなかった。商人上がりでやや貴族より落ちる階層の5人の姉妹の貴族や将校等との結婚をめぐるコメディ・ラブロマンスといった内容で、娯楽作として徹底している。内容は単純だが、主人公の自己をしっかり持った次女エリザベス、聖人のような心を持った長女ジェーン、芸術や勉強だけに精を出す三女メアリー、玉の輿に乗ることしか考えていない四女と五女を中心に、貴族や教職者、将校といった登場人物の人格を明確、丁寧に描き、600ページを超える文量は、エリザベスとジェーンの結婚がハッピーエンドで終わるという結末はほぼ最初から見えているものの決して多いと感じさせない。

 すぐに気づいたのは「風と共に去りぬ」との類似点。主人公はその時代では破天荒といっていいほど自己が確立した気が強く魅力的な女性(エリザベス⇔スカーレット)で、聖人ような親しい親族(ジェーン⇔メラニー)の存在、父は娘の信頼を得ているが寡黙であまりあてにできず、やたらにやかましく、スキャンダルばかりが大好きで下品な中年女性が身近に存在し、主人公のお相手は偏屈なちょっと変わった金持ち。「風と共に去りぬ」が本作の100年以上後の刊行だし、文量も多いので余計に色々肉付けがされているが、骨格はほぼ同じだ。