長い長い殺人/宮部みゆき 1997年 評価:4


 美男美女のセレブな二人の、お互いの配偶者に対する保険金殺人容疑を軸に、刑事や殺された人間、その他関係者等の10の財布が、財布自身が知りうる範囲で事件の真相を語るという、あまりない手法で描かれた作品。

 さすがに名手宮部みゆきで、奇抜な視点で描かれているが上質なミステリーとなっている。内容的には2001年の「模倣犯」につながるような、世間を騒がしたい、自分の秘めたる力を誇示したいという精神的異常者が絡む犯罪を扱っており、それ自体は、今(2018年)では目新しいものではないものの、、財布を擬人化して語らせる手法は、ややもすれば語りすぎる宮部の文章上の特徴が薄らいでいて、かえって読みやすくなっているというメリットも生み出している。