若冲/澤田瞳子 2015年 評価:1
非常に繊細・ち密な描写で豪華絢爛な色使いをする江戸中期の画家で、数年前から一大ブームを引き起こしている伊藤若冲を主人公に、作者の大胆な解釈・設定を施し、若冲の生涯を描いた作品。
読み始めて50ページほどで、非常な違和感を感じ始めたのを禁じ得ない。300年近い昔の江戸時代を舞台にしながら、その時代の雰囲気が全く感じられない。また、史実として判明している若冲の生涯に作者の演出を加えるという、小説における手法自体は理解するが、第三者の登場人物の勝手な思い込みがいつの間にか事実として展開していき、作り物感が満載である。
そもそも結婚していたということも、贋作者となった義弟の存在も史実としては確認されておらず、それが若冲の絵画の特徴の根源にあるという、少しでも絵画に理解がある私としては全く受け入れがたい設定で進んでいくので、そんな、嘘の上に構築された無理筋の小説を読む必要はないと感じ、80ページぐらいで読むのを放棄した。