風と共に去りぬ/マーガレット・ミッチェル 1936年 評価:5


 どうしても映画版も有名なので、それとの比較になってしまうところはあるのだが、ここまで映画のヴィヴィアン・リー(スカーレット・オハラ)、クラーク・ゲーブル(レット・バトラー)が原作のイメージにぴったりとは思わなかった。小説を読み進めてもスカーレットとレットはどこまでも演じた二人のイメージになってしまうが、それは決してこの小説の面白さを損ねるものではない(かえって、より面白く感じられるくらい)。ちなみにボリュームは映画版が長い(それでも原作をだいぶ端折っている)のと同様、2000ページ以上に及ぶ。

 発売と同時に大ベストセラーになった作品だが、南北戦争の実態を反映しているのは、フランス革命の史実が嫌になるほど書かれた「レ・ミゼラブル」ほどではなく適度な感じだし、多彩な登場人物の人物像が丁寧に描かれるので、各人の魅力や欠点などがわかりやすく展開していく。特筆すべきは、スカーレットはほぼ嫌な性格の人間なのだが、それでも十分に魅力的なところだ。それはスカーレットの汚れた心情を自身の気持ちの代弁で描きながら、すぐに第三者的視点で批判的に評するような文章上の工夫だったり、成功もあればその裏に失敗もあるという表裏を同時に描いていることにもよるだろう。また、聖人のようなメラニーを対比的に配置することでも、スカーレットだけでなくレット・バトラーの奇抜さを魅力的にする。

 非常に練られた構成と展開で、娯楽小説として一流であるだけでなく、ピューリッツァー賞を受賞していることからわかる通り、文学としても非常によくできた作品で、映画も小説も傑作というのはなかなかない組み合わせである。