ながい旅/大岡昇平 1982年 評価:3


 第二次世界大戦末期の混乱の中、撃墜した米軍爆撃機搭乗員27名を処刑した件でB級戦犯となり、絞首刑の判決を受けた岡田資陸軍中将の膨大な手記と調査に基づくノンフィクション作品。

 自らの罪を逃れようとする高官も多かった戦後の裁判で、岡田は米軍の民間地域への無差別爆撃の違法性を凶弾するとともに、処刑自体は命令を下した自分だけの罪であることをかたくなに主張し続け、米国検察官や弁護人からも尊敬の念を持たれた大人物である。

 写真もいくつか残っているが岡田は長身で武骨な面構えの美男子で、部下に罪を押し付けない、死ぬ間際になっても仏教を青年囚人たちに説くという人柄も含め、とても魅力的な人物であり、それを余すことなく伝える内容ではあるが、史実を忠実になぞるような文章は、硬質で真実を伝えているという印象は与えるものの、時として平坦で小説としての起伏はなくなるため、評価としては普通に落ち着く。