きらきらひかる/江國香織 1994年 評価:2
アル中で情緒不安定の笑子と、医者でもの静かな優しい性格だがホモで男の恋人(紺)もいる睦月の夫婦は、それぞれの性癖や性格も受け入れながら結婚生活を続けているが、笑子の親友と睦月の恋人・紺の存在や、二人の両親からの子作りに関するプレッシャーなどにより、笑子の精神は不安定になっていく。
奇抜な設定でありながら普通の会話と生活でストーリーが進んでいく様は吉本ばななと作風が似ているが、私はどうしても好きになれない。その理由は主人公の二人の精神が現実の人間離れしているからだ。人間的に特異な存在である二人がなぜ結婚したのか、睦月と紺がどういうところに魅かれ合っているのかなどの根本的な設定のところの描写が極めて少ないので、そもそもの人間関係の設定に不信感を感じてしまう。その結果として、両親からのプレッシャーなんて、結婚を決めるときに当然想定されてしかるべきなのにその都度右往左往する様が全く腑に落ちない。また吉本作品では特異な存在の登場人物でも、それぞれに心の葛藤があって、卑屈なことも意地の悪いことも考えながら結果として優しい行動にたどり着くというような実際の人間が考えるであろう心の道程を描くのに対し、睦月はとことん笑子に対して優しくて、普通の人間ならキレてしまうのを平然と許せてしまう。そんな描き方だから、登場人物に懐疑的なまま話が終わる。