ハネムーン/吉本ばなな 1997年 評価:4


 隣同士の一軒家に住む裕志とまなか。裕志は宗教にのめり込んで海外に移住した両親に捨てられて祖父と二人暮らし。まなかは父と継母と暮らして家事手伝いのようなことをしている。二人は高校生で結婚したらお互いの家で必要以上に干渉しあわずに暮らしていたが、ある日裕志の祖父が亡くなり、二人の人生が動き始める。

 なぜか仕事も持たないのに普通に暮らしていけている二人の主人公に、明治、大正時代の学生っぽい不思議な感覚を抱いてはしまうのだが、庭に座ってゆっくりといろいろなことを見たり聞いたりするのが好きなまなかと、ギスギスすることなく、押しつけがましくない優しさを持つ裕志の関係と行動、やり取りが、とても人間的なやさしさに溢れていて落ち着いた気持ちになれる小説。このように平穏に気兼ねなく一緒に居れる人間関係というものに魅かれてしまう。