背徳者/アンドレ・ジッド 1902年 評価:3


 結核を病んでヨーロッパ各国で療養を繰り返した古典学者のミシェルはやがて病状を回復させるが、今度はその当時献身的な介護を続けた妻が結核にかかってしまう。ミッシェルは妻を伴いかつて訪問した地を巡るが、健康を得たミシェルは妻の介護を続けながらもかの地の快楽に身を委ねていく。

 「狭き門」や「一粒の麦もし死なずば」などで有名で、1947年にはノーベル文学賞を受賞したフランスの作家の、一番最初にメジャーになった作品。ストーリーだけでは不道徳で淫行的な内容を連想させるが、100年以上も昔の作品であり、快楽の内容やその求める動機は極めておとなしいもの。アラブの美少年に魅かれたり、スイスや南ヨーロッパの美しい風景や、それぞれの地に住む雑多な人々の生活にあこがれたりというものであり、その表現の機微は極めて文学的で、内容的には時代遅れの感は拭えないが、文学としてはさすがというものである。